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3月30日午前2時過ぎ、横で寝ている嫁が僕の肩を叩き、苦しそうに言った。
「陣痛きたかも…。」 その言葉に僕の全身はドキンッと波打ったが、動揺を悟られぬよう、なるべく冷静を装って話す。 「痛みがくる間隔は?」 「今は、10分おきに痛くなる…。」 医者からは痛みが10分間隔になったら連絡するように言われていたので、急いで電話。 「今から来てください」との返事だったので、準備しておいた入院道具を抱えて、病院へ向かうことにした。 予定日から約1週間遅れて、来そうで来なかった陣痛がついに我が家へやってきたのだ。 病院に到着すると、嫁は夜間入口のところに用意されていた車いすに乗せられ、なるべく振動が加わらないよう静かに、しかし迅速に産婦人科に連れて行かれた。 僕はまったく人気のないロビーのソファーに腰を下ろし、忘れていた呼吸を思い出したように、長く深い息を吸う。 自分が父親になるという実感はまだ皆無だった。 深夜の病院の薄暗いロビーは、人の気持ちを否応なく不安にさせる。 押し寄せる不安をかき消すように、我が子が産まれる瞬間を何度もイメージし、頭の中で繰り返し描き続けた。 数分後、車いすに乗った嫁が戻ってくる。 看護婦さんに「どうですか!?」と食い気味で尋ねる僕。 子宮口が3センチまで開いているが、出産まではもう少しかかるという。 てっきり、陣痛がきたからには、今すぐにも産まれるものだと思い込んでいた僕は、拍子抜けとも安堵ともつかない複雑な気持ちになった。 出産というのは、そうトントン拍子で進むものではないらしい。 しかし、痛みは定期的にきているので、そのまま入院し、翌朝、先生が来てから改めて診察してもらうことになった。 はじめに通された部屋は、分娩室の一角をカーテンで仕切った簡易ベッドのあるスペースだった。 そこに嫁を寝かせ、僕はパイプ椅子に腰掛ける。 蛍光灯の白い光が、白い壁と白い床に反射して、目が痛い。 嫁は相変わらず苦しそうな表情をしていた。 まだ産まれないと言われたものの、陣痛が治まるわけではない。 むしろ、痛みは徐々に強まり、間隔も短くなってくる。 それが産まれてくるまでずっと続くと思うと、想像するだけで気が遠くなる。 疲れているから寝たいのに、10分に一回は強烈な痛みに襲われるため、とても眠れない状態。 精神はすり減り、体力は嫌が応にも浪費する。 痛みに顔を歪める嫁に、僕がしてあげられることは何もなく、時間の経過をごまかすように、ただただ背中をさすった。 噂には聞いていたが、出産立ち会いに際して男がやってあげられることは本当に少ない。 結局、ほとんど眠れないままで朝を迎えた。 朝になると、個室に移動することになった。 ベッドがあって、ソファーがある。 トイレや冷蔵庫、テレビなど、快適な設備も整っていたが、窓がなくてちょっと息苦しかった。 朝9時頃、ようやく先生の検診を受けることに。 嫁がフラフラしながら病室を出て行くのを見送って、気がつくと僕はソファーに横になって意識を失っていた。 数十分の後、嫁が病室に戻ってくる。 ソファーから飛び起きて、またも食い気味に「どうだった?」と状況を聞くと、子宮口が6センチまで開いているとのこと。 順調ではあるが、出産に至るまでには10センチまで開くのを待たなければいけないらしく、再び痛みとの戦いが始まった。 しかし、今思うと、この頃はまだ余裕があった方だったかもしれない。 ご飯も食べれていたし、自力で立ち上がることもできた。 病院に来てから6時間で3センチ。 ということは、少なくともあと8時間以内には産まれてきてくれると思っていた僕は、あまりに単純で、楽観的だったと認めざるを得ない。 陣痛との戦いは、ここからさらに30時間も続くことになるのだ。 続く…
by abe-kohey
| 2014-04-17 17:32
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