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結婚や子どもを持つことを〝人生の足枷〟と捉える人がいる。
悲しいかな、その考え方には的を得ている側面もある。 独身時代は誰に気を使うでもなくできていたのに、結婚や出産を機にできなくなってしまうことというのが、この世には確かにあるのだ。 その代表的なものが〝深夜バスに乗ること〟である。 突然だが、みなさんはどのくらいの時間バスに乗っていたことがあるだろう? 僕は最長で26時間だ。 限りある人生のうちの貴重な一日を、僕はバスから一歩も出ずに使い果たしたのだ。 人生で最も非生産的な一日と断言してもいいだろう。 しかし、その間、僕は600キロ近いの距離を移動した。 寝て、食って、映画を見ながらダラダラして…、それでも目的地に近づけるというのが〝移動〟の素晴らしいところである。 何一つ生み出さなかったが、ウシュアイアに到着した時はとても充実した気分だった。 世間には長距離バスを〝地獄〟と非難する人も少なくないが、僕は時々無性に乗りたくなる。 もちろん飛行機や新幹線に比べると乗り心地の面でもスピード面でも見劣りするが、見知らぬ土地で、まだ人気のない早朝の駅前に放り出される感じが妙にワクワクするのだ。 地元の人にとっては何でもない日常の風景だろうが、旅行者の目には、素晴らしい一日になりそうな予感で満ちているように映る。 しかし、それはあくまで無知で体力も有り余っている若い頃の話。 体力が下り坂にさしかかると言われる30代になってからは一度も乗っていない。 先日、家族で函館に帰省する予定があったが、仕事の関係で僕だけ飛行機をキャンセルしなければならなくなったので、いい機会だと思って深夜バスで青森まで行ってみることにした。 東京から青森までの乗車時間は約10時間。 相手にとって不足はない。 来たる3月某日。 僕はビールとつまみを十分に買い込んで、万全の準備でバスに乗り込んだ。 連休前ということでバスは満員。 スマホで音楽を聴いている人、コソコソと耳打ちするような声で話をしている人、すでにアイマスクをして寝ている人…薄暗い車内には何の法則性もなく様々な人が蠢いている。 『パンダ号』という可愛らしいネーミングとは裏腹に、車内の空気は灰色に見えるくらいどんよりしており、どこを見渡しても明るい要素はない。 青森に行くのを楽しみにしている人はひとりもいないのだろうか。 まるで自分の意思とは無関係にバスに乗せられているような顔をした人ばかりが目につく。 「あれ、深夜バスって、こんなにシリアスだったっけ?」と、額に焦りが滲んだ。 気分は、長いブランクから復活したスポーツ選手。 久々の現場は戦場に見え、自分がとても弱々しい存在に思えた。 4列シートのバスで、僕の席は通路側だった。 かつては自分の中に持っていたはずの「席別・深夜バスでの寝方の極意」といったノウハウは既に失われているため、これが幸運なことなのか、不運なことなのかの判断はできない。 ただケツの落ち着く位置を探しながら、隣の席に現れるであろう燐客の姿を想像し、第一声のかけ方を考えた。 しかし、結果的に、そのイメージトレーニングは無駄に終わった。 なんと隣に誰も来ないまま、バスが動き出したのである。 車内アナウンスによると、次に止まるのは高速道路のパーキングとのこと。 つまり、途中で乗ってくる客はいない。 満員の車内で、僕の隣だけが空席だったのだ。 飛行機をキャンセルし、直前に予約したことが幸いしたのかもしれない。 普通に考えると、これは深夜バスにおいて最高レベルに幸運な出来事だ。 狭さがネックといわれる深夜バスで、ひとりで2席分を使えるというのは、ひとりでスイートルームに宿泊する贅沢に匹敵する。 もしかすると、車内の乗客をすべて敵に回す可能性すらあるだろう。 しかし、僕にとってこの事態は深刻な状況だった。 今回の深夜バスには実力試しの意味合いがあるのだ。 30代でも十分に深夜バス移動ができるという実感を得るために飛び乗ったのに、これでは状況がゆるすぎる。 僕の中では「いや、待てよ。隣が空いていようと、自分の席だけを使えばいいじゃないか!」「でも2席分を使えるチャンスをみすみす破棄するなんて、深夜バスへの冒涜だ!」などという謎の葛藤が巻き起こっていたが、とりあえず落ち着きを取り戻すためにビールを一気に飲み干した。 人間は農耕技術を得たことにより定住化が進み、蒸気機関が開発されたことで生活領域が飛躍的に広がり、そして今、テクノロジーの発達によってインターネットを手放すことができなくなっている。 人類が辿ってきた道を見ればわかるように、人間が環境から受ける影響は計り知れない。 どんなに確固たる信念を持っていようとも、深夜バスで隣の席が空いていれば、2席分を使ってしまうのだ。 それが人間というものである。 かくして僕は、特に苦痛を感じることもなく爆睡して青森に到着した。 早朝の青森駅では高校の友人が待っていてくれて、狭いバスに長時間乗っていたから疲れただろうと、そのまま浅虫温泉に連れて行くれた。 誰に対してかはわからないが少し申し訳ない気持ちになった。 また機会があれば、必ずリベンジしたい。
by abe-kohey
| 2015-04-10 17:11
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